借金の返済ができなくなったときの選択肢は、自己破産だけではありません。「個人再生」という仕組みもあり、同制度を活用すれば自宅を手放さず借金を大幅に減額できる可能性も出てきます。
この個人再生が具体的にどのような仕組みで、どのような方が利用でき、どのように手続きが進むのか、制度の概要を紹介していますのでぜひチェックしてください。
個人再生の仕組み
個人再生とは、経済的に困窮した個人が破産をせずに債務整理をできる法的制度のことです。
将来の収入を原資として作成する返済計画(再生計画)を裁判所が認可し、計画に従った返済を完遂することで、残りの債務について免除を受けることができる仕組みになっています。
この制度の最大の特徴は、財産を処分する必要がない点にあります。
自己破産だと自宅や車などの大きな財産を失う可能性が高いのに対し、個人再生では重要な財産を保ったまま債務整理を進めることができるのです。
特に住宅ローンに関する特則を利用すれば、マイホームでの生活を維持しながらほかの借金を大きく圧縮できる可能性が出てきます。
個人再生の利点と注意点
個人再生の利用を検討するにあたっては、同制度の利点および注意点について理解を深めておく必要があります。
主に、以下に掲げるような特徴があることを把握しておきましょう。
《主な利点》
- 住宅ローン特則の条件を満たせばマイホームを手放さずに済む
- 職業制限がない(警備員、保険外交員等でも継続可能)
- 強制執行(給与の差押え等)を止めることができる
- 任意整理よりも大きな債務減額が期待できる
- すべての債権者からの同意までは必要ない
これらの利点があることから、個人再生は住宅ローンがある方や職業上の制約がある方にとって特に有効な選択肢といえるでしょう。
任意整理では債務の減額効果が限定的ですし、自己破産では失うものが多すぎるという場合に、個人再生が最適な選択肢となるケースがあります。
一方で、次の点には注意しなくてはなりません。
《主な注意点》
- 手続きが複雑で裁判所とのやり取りなどに専門的知識が必要
- 専門家への依頼費用などで高額になりがち
- 7年間の再申立制限がある(給与所得者等再生)
- 個人再生が認められてからも継続して3~5年間の返済が必要
手続きが複雑で、多くの場合弁護士への依頼が必要となるでしょう。
その分費用も発生しますし、自己破産のようにほぼすべての債務を免責されるわけではないため、返済の負担はしばらくの間続きます。
小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの類型
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの類型があります。
どちらを選択できるかにいよって返済額や手続きの進め方が大きく変わることになります。
| 項目 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
| 対象者 | 継続的な収入がある人 | 収入の多くが給与等であり継続した収入があること、その変動幅が小さい人 |
| 債権者の同意 | 必要(債権者の過半数かつ債権額の過半数の反対がなければ可決) | 不要 |
| 返済額の基準 | 以下の基準のうち一番高い値
①最低弁済額 ②清算価値 |
以下の基準のうち一番高い値
①最低弁済額 ②清算価値 ③可処分所得基準額 |
| 申立制限 | なし | 7年間は再申立不可 |
個人再生を利用できる人の条件
個人再生を申し立てるためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。
まず着目したい条件は「借金総額が5,000万円以下(住宅ローンを除く)であること」です。
この金額には利息制限法による引き直し計算後の金額が適用されるため、実際の借入額が5,000万円を超えていても、引き直し後に5,000万円以下になれば利用できる可能性はあります。
なお、5,000万円を超える借金があったとしてもそれだけで申し立てができるわけではなく、支払不能またはそのおそれがあるなど、返済に困っている状況が求められます。
また別の条件として「将来にわたって継続的反復的に収入を得る見込みがあること」も挙げられます。正社員であることまでは求められておらず、パートやアルバイト、年金受給者、個人事業主であっても、定期的な収入があり今後も継続する見込みがあれば問題ありません。
個人再生手続きの進み方
個人再生の手続きは、債務者の住所地を管轄する地方裁判所への申し立てから始まります。
申立書には職業・収入・申し立てに至った事情などを記し、債権者一覧表やその他の各種添付書類も併せて提出。裁判所による審査を受け、問題なく開始決定が出されると、官報に掲載されて債権者への通知も行われます。
その後、債権調査を経て債務者が再生計画案を作成・提出します。
小規模個人再生では債権者による書面決議が行われ、給与所得者等再生では債権者からの意見聴取が実施されます。
そうして、最終的に裁判所が計画を認可すれば、返済が開始となります。
期間の相場
個人再生手続きにかかる標準的な期間は、申し立てから認可決定までで6ヶ月程度と説明されることがあります。
ただし、同制度の進行の仕方は個別の事案により大きく異なり、実際には4ヶ月程度で終わることもあれば1年以上かかることもあります。
長期間必要となるケースとしては、「債権者の異議が多いケース」「書類不備が重なるケース」などが挙げられるでしょう。
また、返済計画が認可されても返済が数年程度続きます。その期間中も個人再生手続きの一環であることに留意し、着実に返済を続けるようにしましょう。
費用の相場
費用に関しては、裁判所への申し立て時に収入印紙代・郵便切手代・官報公告費用が発生します。
金額が裁判所によって若干異なることには注意が必要ですが、これらの諸費用に関しては合計でも数万円程度です。
一方で「個人再生委員に対する報酬」や「弁護士への依頼費用」はいずれの費用に関しても数十万円程度が必要となります。
なお、個人再生委員とは手続きが適正に進むよう監督・調査等を行うため裁判所から選任される者のことです。
債務者本人が申し立てをするときは原則として選任されますが、弁護士を代理人としているときには選任されないこともあります。
※実際の運用方法は裁判所によって異なることに注意。








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